❒社会の総余剰と政府の関与
問題だらけの市場均衡理論でしたが、そこからさらにおかしな話になっていきます。
少しグラフを使うことをお許しください。
まず需要曲線Dと供給曲線Sとの交差点で市場が均衡し、
お互いの利益(余剰)が最大となります。(社会的に最適な状態)
①買手の余剰: 高くても買おうと思ってた人にとっては安くてラッキー!な度合い
②売手の余剰: (売値P×数量Q)-コスト つまり儲けの度合い
そこに政府が税金t(定額税) を課した場合、供給線Sが上にシフトします。
供給線S'になると買手の余剰も売手の余剰も減ります。↓
税金分価格が強制的に高くなるのですから、
買手にとっては、値上がりする分、ラッキー度が減ります。
売手にとっては、売れる数量が減るので当然儲けも減ります。
政府にとっては税金を収入(儲け)とみなします。
すると結局、課税前と課税後で↓黒枠の分だけ死荷重(無駄)が生じてしまいます。
課税すると社会全体では無駄が生じることがわかりました。
では、今度は政府が補助金を出す場合はどうでしょうか。
買手にとっては実質安く買えて、売手にとっては実質高く売れて
さらに取引量Qも増えるのでWin-Winです。①+②の余剰も増えています。
ただし政府がその補助金率×Qの四角形分、お金を出しているわけなので
補助金額③(四角形)を差し引かなくてはなりません。
すると結局、補助金前と比べると補助金後の方がドクロ分
社会の総余剰は減ってしまいます。
このことが新自由主義者が、政府の介入をとことん嫌い、
自由競争市場が望ましいと解釈した理由の一つだと思われます。
❐コストと税金と財政支出の本質を考える
さて、最初の図に出ていたコストの部分って何でしょうか。
売手のコストというのは、つまり調達先に支払う材料費、従業員の給料、
あるいは設備投資の償却費などのことです。
これって社会余剰とは無関係ですか?あり得ないですよね。
このコストは全て川上の業者などの付加価値が積み上げられたもので、
当然これも社会余剰です。
※ただし今回は輸出入の無い閉鎖経済となっています。
となると①+②+④が本来の社会的余剰と考えられます。
厳密に言うと②+④が本質的な付加価値に相当するもので、
買手のラッキーポイントのような①って何なんだ…とか思ってしまいますが、
ここでは置いておきます。
さらに税金と補助金についてですが、まず大前提として政府の余剰と
民間の余剰を混同しているのが明らかに間違っています。
極端な例で考えてみてください。政府が税金を絞り取りまくって
国民が貧困にあえいでいる状態でも、社会的総余剰はあるからOK!
とはなりませんよね。
買手のラッキーポイントとかいう気持ち的な幸福度を含めるなら、
当然、国民が貧困していることは社会的総余剰ではマイナスになります。
ていうかそもそも政府/国家の目的が『経世済民』ですから論外です。
なので増税は、社会余剰を劇的に減らしてしまいます。↓
逆に補助金についても、政府の負担は社会の負担と一緒にするから
死荷重が生じるように見えてしまう。
勘違いしないで欲しいのは、税金が要らない!とか税源なくても補助金が
無限に出せる!とかではありません。
税金は国家の儲けのようなものではなく、本質的な他の目的があります。
また財政出動をしすぎると悪性インフレになってしまいます。
やっぱり古典派経済学って税金とか財政とかを理解しないまま、
経済を語っているんだなと思いました。
❐私の現実市場均衡モデルでの課税状態
一応載せておきます。
・買手と売手の余剰
・政府が課税した時の誤った余剰パターン
・真の社会余剰